「年収が増えたら、手取りが減った気がする…」
「なんでいっぱい稼いだら、その分税金も重くなるの?」
──そんな疑問、抱いたことありませんか?
所得税は“稼げば稼ぐほど税率が上がる”累進課税制度が採用されています。
でも、それが「不公平じゃない?」と感じる人も多いはず。
この記事では、
- 所得税の基本的な仕組み
- 累進課税ってどうなってるの?
- なぜこの制度を採用しているのか?
- 実際の税率計算の仕組み
などを、できるだけやさしく・シンプルに解説していきます。
「モヤっとするけど、実はちゃんと理由がある」
そんな納得感を、この記事で一緒に得てもらえたら嬉しいです。
所得税とは?基本の仕組みを解説
「所得税って、なんとなく毎月引かれてるけど…」
そう思ってる人、けっこう多いかもしれません。
ここでは、まず所得税の基本構造からおさらいしていきましょう。
✅ 所得税=“儲けに対してかかる国の税金”
所得税は、個人が1年間に得た“所得(もうけ)”に対して課税される国税です。
収入 − 経費や控除 = 所得
所得 × 税率 = 所得税額
つまり「稼いだ金額そのもの」にかかるのではなく、
控除や必要経費を差し引いた“純粋なもうけ”に対してかかる税金なんです。
✅ 課税対象は「年間のすべての所得」
給与だけでなく、
- 事業所得(フリーランス・自営業)
- 不動産所得(賃貸収入)
- 雑所得(副業・ポイント・仮想通貨)
- 利子・配当・譲渡所得 など
も対象になります。
✅ 国が直接徴収する「国税」
所得税は、国が集めて国の予算として使われる国税です。
住民税(都道府県・市区町村に払う地方税)とは別物。
この「所得税」という制度のうえに、
“累進課税”という税率のルールが存在しているというわけなんですね。
累進課税とは?その仕組みをわかりやすく
「累進課税って、なんとなく“たくさん稼ぐと税率が上がる”ってやつでしょ?」
──そうなんですが、実はこの仕組み、よく誤解されているポイントもあるんです。
✅ 累進課税=所得が多い人ほど税率が高くなる制度
所得税は「一律○%」ではなく、
所得に応じて税率が段階的に上がっていく仕組みになっています。
✅ 2024年版:所得税の速算表(基礎控除後)
課税所得(万円) | 税率 | 控除額(万円) |
---|---|---|
~195万円 | 5% | 0 |
~330万円 | 10% | 9.75 |
~695万円 | 20% | 42.75 |
~900万円 | 23% | 63.6 |
~1,800万円 | 33% | 153.6 |
~4,000万円 | 40% | 279.6 |
4,000万円超 | 45% | 479.6 |
✅ よくある誤解:「所得が900万超えたら全部23%になるの?」
答えはNO!
✅ 正しくは → 各段階に応じて「少しずつ」課税される
たとえば課税所得が800万円の人なら:
- 最初の195万円 → 5%
- 次の135万円 → 10%
- 次の365万円 → 20%
- 最後の105万円 → 23%
といったように、「累積で段階的に課税される」のが本当の仕組みです。
このように、「高収入のすべてが高い税率で取られる」わけではないんですね。
✅ ポイント:「段階ごとにかかる」=実質の平均税率は案外低めということも多いです。
なぜ日本は累進課税を採用しているのか?
「頑張って稼いでる人から、たくさん取るのって不公平じゃない?」
そんなふうに感じたことがあるかもしれません。
でも実は、累進課税には明確な理由と目的があるんです。
✅ ① 所得の再分配(格差をならす)
人によって所得には大きな差があります。
この差を放置すると、貧富の格差がどんどん広がっていきます。
そこで累進課税は、高所得者には多く負担してもらい、低所得者の負担は軽くすることで、
所得格差をゆるやかに調整する役割を担っています。
✅ ② 社会的公平性の確保
「負担能力に応じて税金を払う」という考え方は、税制の基本中の基本。
年収200万円の人と2,000万円の人が同じ税率だったら、
生活への影響はまるで違いますよね?
だからこそ、累進課税で“無理なく・平等に”税を分担する仕組みが作られているんです。
✅ ③ 国の財源を安定的に確保できる
高所得者が多く納税することで、
国としても税収の基盤が安定しやすいというメリットがあります。
たとえば法人税や消費税よりも、所得税は個人の事情に応じた柔軟な仕組みなんですね。
このように、累進課税は「ただの取りすぎ制度」ではなく、
📌 社会を安定させる
📌 格差を調整する
📌 財源を確保する
という3つの柱で支えられた“必要な制度”でもあるんです。
実際の計算で見る!“損した気分”は勘違い?
「年収上がったのに、手取りがあんまり増えてない…」
「税率が高くなるって、損してる気しかしない!」
──でも、それってほんとうに“損”なんでしょうか?
✅ 例:年収800万円の人が課税される流れ
【前提】
- 所得控除後の課税所得が650万円
- 累進課税の段階に当てはめると…
所得区分 | 金額 | 税率 | 税額 |
---|---|---|---|
~195万円 | 195万円 | 5% | 9.75万円 |
~330万円 | 135万円 | 10% | 13.5万円 |
~695万円 | 320万円 | 20% | 64万円 |
✅ 合計税額 → 約87.25万円
✅ 実質の平均税率 → 約13.4%
✅ ポイント:すべてが20%課税されるわけじゃない!
多くの人が「自分の所得がこのランクになったら、全部その税率で取られる」と勘違いしがちですが、
実際は“超えた部分だけ”が高い税率で課税されるだけなんです。
✅ もう1パターン:課税所得300万円の人
所得区分 | 金額 | 税率 | 税額 |
---|---|---|---|
~195万円 | 195万円 | 5% | 9.75万円 |
~330万円 | 105万円 | 10% | 10.5万円 |
✅ 合計税額 → 約20.25万円
✅ 実質の平均税率 → 約6.75%
こうしてみると、
「高所得者は高い税率で払ってるけど、全体の中では“ごく一部にだけ”高い税率が適用されている」
ということがよくわかります。
だから、「損してる気がする」は、数字のカラクリを知らなかっただけかもしれませんね。
海外と比較するとどうなの?
「日本の累進課税って重すぎない? 他の国もこんな感じなの?」
──そんな疑問に答えるべく、いくつかの主要国の制度と比較してみましょう。
✅ 各国の最高税率比較(2024年時点)
国名 | 所得税の最高税率 | 適用される所得(例) |
---|---|---|
🇯🇵 日本 | 45% | 課税所得4,000万円超 |
🇺🇸 アメリカ | 37% | 約6,000万円超(単身) |
🇬🇧 イギリス | 45% | 約2,700万円超 |
🇫🇷 フランス | 45%+社会負担 | 約2,100万円超(+年金税など) |
🇸🇪 スウェーデン | 57%(地方税含む) | 約1,000万円超 |
✅ 日本の特徴は?
- 所得税率そのものは中〜高水準
- ただし「社会保険料」や「消費税」と合算すると、実質の負担率は欧州より低めとも言われている
- 税率の“適用スタートが遅め”(高所得者にだけ課税が集中)
✅ 所得格差是正のバランス感
- 欧州諸国は“重税だけど福祉も手厚い”スタイル
- アメリカは“自己責任寄り”で低税・低福祉
- 日本はその中間で、「低中所得者層を守りつつ、高所得者に多めに負担してもらう」形をとっている
つまり──
✅ 日本の累進課税は“ガチ重課税”ではないが、
✅ 高所得層にしっかり負担してもらう中庸タイプと言えるんですね。
まとめ:累進課税の仕組みを知ることで、納得と安心が生まれる
「なんで稼げば稼ぐほど税率が上がるの?」
「頑張って働いてるのに、なんか損してる気がする…」
そんな疑問やモヤモヤに対して、
この記事では累進課税の仕組みとその理由を、わかりやすく解説してきました。
✅ おさらいポイント
- 所得税は「所得(もうけ)」にかかる税金で、段階ごとに税率が変わる
- 税率が高くなるのは一部だけ。全部が同じ高税率になるわけではない
- 累進課税は「格差の是正」「社会的公平性」「安定した財源確保」が目的
- 世界的にも日本は“中庸”な立ち位置。制度としてはバランス型
「納税=損すること」ではなく、
「社会を成り立たせるために、みんなで少しずつ支える仕組み」なんですね。
✅ だからこそ、ただ文句を言うのではなく、
正しく理解して、自分の人生に合わせて工夫する視点が大切。
- 控除を上手に活用する
- 節税制度を学ぶ
- 将来の資産形成にも目を向ける
そうすることで、「納税される側」から「納得して納める側」へ。
少しだけでも視点が変われば、それはもう大きな一歩です。
この記事が、あなたの「税金イヤやな…」という気持ちを、
**「知ってよかった!」「納得できた!」に変えるきっかけになれば嬉しいです。
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